京都のホームインスペクター 

ホームインスペクション(住宅診断)のブログ

稼ぐまちが地方を変えるを読んで

 II「稼ぐまちが地方を変える」を読んで

 

暑い夏が終わったと思ったら、秋雨のあとの台風。北関東、東北地方では河川の堤防が決壊して大変なことになっています。

 平常時は意識することのない、堤防やダムは私達の身近な生活基盤を守ってくれているのだと改めて実感しています。 天災のときに改めて治水の大切さを感じるところです。また、洪水による避難は地震の場合と異なり、広域にわたり避難が必要になるということもわかりました。避難先の公民館が冠水して孤立してレスキュー隊に救助されていました。

今回を教訓に今一度、地震、洪水などの場合の避難方法を確認する必要があると実感しました。

 

「稼ぐまちが地方を変える」

 さて、今回は本の紹介です。

「稼ぐまちが地方を変える」木下斉 著 NHK出版 

実はもっと前から書こうとしていたのですが、まとめきれずにずるずると今まで引っ張ってしまいました。。

筆者は木下斉氏。 1982年生まれ(若い!)自ら投資家、経営者として全国各地のまちで事業開発や運営に携わっている方です。 私が初めて知ったのは2013年の北九州リノベーションスクールのレクチャーでした。 TwitterのTLで流れてきたツイートのリンクをたまたまクリックして見たのがきっかけでした。

それ以降、まちづくりの経営力」まちづくりデッドライン」といった氏の書籍や、氏が代表理事を務める一般社団法人エリアイノベーションアライアンス(AIA)のメールマガジン「エリアイノベーションレビュー(AIR)」を通じて、

まちづくり「行政主導の再開発」ではなく

まちづくり」=「稼ぐこと」ということを学びました。

昨年には大学時代の先輩たちとチームを組んで、とある公共遊休不動産を利活用し、周辺地域のまちづくりを行う事業企画を作成して行政に提案するところまで行きました。

力不足、経験不足もあり残念ながらその計画は実現に至りませんでしたが、提案内容やその事業スキームを作成するにあたり木下さんの著書が参考になったことは言うまでもありません。

 

まちづくり」とは何?

まちづくり」とはどんなことを想像するでしょうか?

公民館におじさんたちが集まって、カラー付箋に「困ったこと」や「やりたいこと」を書いてみんなでワイワイ発表する。ことでしょうか?

商店街にある空き店舗のシャッターに絵を書いたり、学生の力を借りて賑やかしイベントを行うことでしょうか?

それとも、都市計画のプランニングでしょうか?

それぞれ、「まちづくりワークショップ」や、「まちづくりイベント」、「(行政の)まちづくり」と呼ばれているものですが、本書の「まちづくり」とは異なります。

まちを会社に見立て、まちづくり「まち」を「経営する」としています。 年中会議だけしている会社なんてありませんし、年に数日のみしか稼働しない会社も、組織編成だけし続ける会社も存在しないでしょう。

たとえ、社会的に有意義な活動をしていても、その活動が続かなければ意味無いですし、その活動を検討しているだけで、行動しなければもっと意味がありません。社会的に有意義な活動を続けるためには一定の「収益の確保」「結果」を残す必要があります。 

 

沈下し続ける地方都市

バブル崩壊以降、日本経済が成熟期(低成長期)となり、更に人口減少がトレンドで、行政の税収増を見込めない一方、医療、介護、子育てなど保健、福祉社会保障分野への支出がどんどん膨れ上がっています。「おもてなし」どころか、「財政破綻待ったなし」の状態です。 私が住む京都市は近年観光客(特にアジア)が増えていおかげもあり、一見活気がありますが、少子高齢化、空き家、保育園不足など他の地方都市同様の問題も抱えています。

じゃ、どうすりゃいいの? ということで、地方自治体は国や県などから「補助金」をひっぱり、市街地活性化のためにドカンと「再開発事業「商店街活性化」を実行して一発逆転を狙います。 その事業の結果というと。

個別の紹介は避けますが、残念ながら全国各地、再開発事業で建てた駅前ビルのテナントは早々に撤退して、明るい廃墟ビル、いわゆる「墓標」となるか、空きテナントを役所が借りる「第二の役場」になる。というのものがほとんどのようです。

それの何がイケないのかというと本来、税収アップを目的とした開発事業や観光事業ですが、その失敗の穴埋めに税金が投じられ、結果として税収減になっているということです。 

さらに、その失敗の責任を誰も取らず(役所は失敗とは思っていない)同じように補助金を使った無益な公共投資を繰り返す補助金依存の悪循環」を引き起こし、どんどん税収は減り沈下していくといいものです。

 

稼ぐまちをつくる10の鉄則

役人が自ら稼ぐ事業をできるわけありません。そもそも税金という人のお金を使って事業することが間違いで、やらないほうがまだマシなのですね。

一発大逆転狙いの「とんでも事業」は失敗するので、地味でも小さくて稼げる事業をできるだけ沢山実践することが大切といいます。 ただ、事業はすべて成功するとはかぎらないので、最初の計画を「軌道修正できる柔軟さ」とそれを判断できるチームの「機動力」が大切といいます。

また、店舗単体ではなく「エリア」という単位でまちを考えることが大切です。それはひとつの店舗で得た稼ぎの1/3を次に出店する店舗の再投資に使うというもの。この循環は最初の動き出しははゆっくりですが、軌道にのれば乗数的にまちを変える仕組みになるといいます。

こういった実際のまち事業経営から得た知見をまちづくりを成功に導くための「10の鉄則」としてわかりやすく具体的にまとめられています一読する価値ありです。(「メソッド」と言わないところがいいですね)

本書は過去の失敗事例を元に「行政は無能」とは言っていません。まちづくりを成功させるために行政マンの優秀な事務能力は不可欠です。民間主導で事業を実践し、行政はその事業に対して複雑な行政手続きの補助、規制緩和などできることは沢山あるので、民間と行政がそれぞれの立場で緊張関係を保ちつつ緊密に連携しすることでお互いが動きやすい環境をつくることが大切と言っています。

 

「地方創生の交付金が少ない。」と注文をつけたどこかの知事、市長はぜひ本書を読んで、自らの自治体の地方創世総合戦略を見なおしてほしいところですね。