地震保険について正しい知識と判断を
I地震保険について正しい知識と判断を
2021年2月13日23時に福島県沖を震源とする地震が発生し、最大で震度6強の揺れが観測されました。
震度6強といえば、2018年6月に発生した大阪府北部地震と同じ強さの揺れだったということになります。
地震直後からSNS等で家の中の棚が倒れて食器が散乱している写真、コンビニエンスストア店内の陳列棚が倒れている写真がアップされています。
それに加え、
『被災した家財を片付ける前に写真を撮影しておくと地震保険がもらえやすくなる』
『これだけ地震や災害が続くと保険会社も保険金を出し渋る』といったようなツイートも出だして拡散されていました。
*SNSの不確定な情報ではなく正しい知識を
2018年の大阪府北部地震では鑑定事務所に所属する「損害保険鑑定人」として保険会社から依頼をうけて200件を超える震災調査を行いました。
その経験から地震保険について出来る限り分かりやすく実際の保険調査や支払について説明していきたいです。
地震で家財が被災した場合、損害の写真があっても、なくても地震保険の支払いに変わりません。 それよりもむしろ、2次的な災害がないように、早く生活を立て直すためにも家の中を片付けてください。
壊れたり割れたり、散乱して使えなくなったものは処分してしまっても大丈夫です。そのなかで地震保険申請のためには下の2つのポイントを覚えておいてください。
- いつ、何が壊れたか。
- どこにあってどのような被害にあったか。
*いつ、何が壊れたか
当然ですが、地震の前からすでに壊れていたものや地震発生後10日以上後に壊れたものは震災損害には入りません。 家財で何が被害にあったか、処分したか(無理に処分しなくても大丈夫です)を聞覚えておいてください。『お皿』『お椀』『時計』『テレビ』等のざっくりした内容で結構です。
*どこにあって、どのように壊れたか
壊れたものが家のどこにあったのかも覚えておいてください。下のようなざっくりした感じで十分です。
- リビングのテレビ台に置いてあったテレビが倒れて画面が割れて買い直した。
- キッチンの調味料が床に落ちて散乱したので処分した。
- 地震で窓ガラスが割れてベッドにガラスが散乱したので布団を処分した。
- 子ども部屋の本棚が倒れて本が床に散乱した。 本棚と本は処分してないが傷がついた。
被害にあった家財を処分した場合、そのもの自体が無くてもそれがどこにあって、どのような損害があったかを覚えておいてください。
保険会社に損害請求したら後日、鑑定人や保険会社の社員が震災の損害状況調査に来ます。その際に上記の2点を聞かれると思いますので説明できれば問題ありません。
家財を片付けてしまった事が原因で地震保険が支払われない。
ということはありませんので、生活再建のためにも被害のあった家の中を片付けてください。
*保険金はいくら支払われるの?
とても重要な点ですが震災で壊れた数や購入金額が何円だったかは「地震保険」では関係ありません。
地震保険の損害算定は残念ながら100円のお皿が1枚割れても、1万円のお皿が10枚割れても『お皿に損害があった』という点で同じになってしまいます。
地震保険は被害にあった物を買い戻す費用ではなく、生活を立て直すためのお見舞金的な扱いです。家の家宝としていた高価な壺が壊れても、地震保険ではその買い直し費用は出ません。
地震保険の支払額は地震保険の家財に掛かっている保険金額のうち、家財損害の程度に応じて5%(一部損)30%(小半損)60%(大半損)100%(全損)というかたちで支払額が決まります。
『家財』というと家電や食器、家具は思い浮かびますが、食料品や衣類、寝具、宝石類、時計、スポーツ道具等も家財の対象になるので、被災して処分した家財を覚えておいてください。
*震災が続くと保険金は出し渋りされるの?
2011年東北大震災、2016年熊本地震、2018年大阪北部地震、今回の2021年東北地震と大きな震災が続くと『本当に保険金大丈夫?』『保険会社って出し渋りってあるんじゃない?』 と思ってしまいますよね。
そのとき、地震保険金の仕組みを知っておくと安心できると思います。
地震保険は各民間の損保会社が窓口となって住宅の火災保険とセットで受け付けています。各損害保険会社は掛けられた地震保険金を再保険として国に預けます。
地震保険は損害規模の大きさから国と損害保険会社が保険金を支払うことになっています。 現在1回の地震で支払い可能な金額は11.7兆円となって東日本大震災、熊本地震、大阪府北部地震においても円滑に支払われたとのことです。
地震が続くからという理由で地震保険の損害金額を出し渋るということはありません。
また、震災の損害調査での損害程度の算出方法は住宅・家財それぞれ国のガイドラインがあります。 どの民間損保会社でも(JA共済除く)同じ基準、同じ方法で支払額が決まります。 損害の程度が「一部損」に満たない場合は「無責」となってしまい、震災の保険金は支払われません。
地震保険については過去の投稿でも詳しく書いているので参考にしてください
inspectionkyoto.hatenablog.com