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京都 ホームインスペクション(住宅診断)のブログ

火災保険の支払申請について

II火災保険について考える

2018年も終わりますが、今年は地震、台風、猛暑と災害続きの一年でした。 特に9月の台風では西日本を中心に大きな被害が出ました。

台風や豪雨、大雪などで住宅が破損した場合、加入している火災保険で保険の支払申請を行うと保険会社で損害調査を行い原状復旧相当の保険金が支払われます。このことは皆さんご存知かと思います。ところで、同じ台風の雨漏りでも保険金が支払われる場合と支払われない場合があることはご存知でしょうか?

意外と知らない、知らないと損するかも知れない、火災保険について考えてみます。

 

保険の種類

住宅火災保険は保険会社が多くの保険商品を出していて数多くの保険種類があります。概ね火災保険で火災、風災、雪災、水災、水濡等によって家屋、家財、塀や門等に対し物理的に破損があり、損害調査の結果、損害として認められた場合に保険金が支払われます。もちろん、保険の種類、加入している特約によっても内容が異なるので一般的な内容について考えていきます。

 

損害保険の中でも事故原因の件数が多い台風での風災を例に挙げてみます。

 

庭木単独の倒木は損害対象外

住宅火災保険は住宅などの建物や倉庫や塀、カーポートなどの附属建物に損害があった場合は風災として認められますが、強風で庭の庭木が根こそぎ倒れてしたので庭木を撤去した場合は風災の損害として認められません。しかし、庭木が倒れて住宅の塀や屋根を壊した場合、庭木の撤去費用をはじめ、塀や屋根の復旧は風災の損害として認められます。

 

強風雨での雨漏れは損害対象外

普段の雨程度であれば雨漏れは無いが、強い雨と強風にあおられて雨が屋内に入ってきた。ということはよくあることです。雨漏れで天井と壁にシミが出来たり屋内の家財がダメになることもあります。雨漏れは風災として認められそうな感じがしますがじつは、損害としては認められません。認められる雨漏れの代表は屋根材が飛ばされてしまったり、屋上防水が大きく剥がれてしまった場合に屋内へ水漏れした場合は、まず風災として認められ、屋根や防水面の補修から屋内漏水部の復旧の損害が認められます。

つまり、風災によって物理的に外壁や屋根等で何かが壊れたことが起因して生じる雨漏れについては保険対象になりますが、外部損傷を伴わない漏水保険対象にはなりません。

 

経年劣化が原因の雨漏れは損害対象外

屋根はメンテナンスしなければ、アスファルトシングル葺、化粧スレート葺、瓦屋根経年劣化でボロボロになります。経年劣化が原因の雨漏れは基本的に損害対象になりません。また、損害調査の結果、損害認定された場合でも保険の種類によっては経年劣化分の建物価値を減額される場合があります。

 

損害認定は損害部分復旧が原則

『復旧』とは元のもの同じのもので治すことで、前のものと明らかにグレードが異なるものは認められません。強風で物置が倒れて壊れた場合、壊れた商品と同じ物置を新品で設置する金額が支払い対象になります。メーカーで商品が廃盤になり、同じものが手に入らない場合は同等品を設置する場合の費用が採用されます。

また、築40年の住宅で台風で屋根材の一部が風で飛んでしまった。この機会に『屋根を葺き直したい』と思い、全面葺き直しの金額を申請したらどうなるでしょうか? この場合は保険で飛んでいった分の屋根材の復旧費用等は認められますが、屋根全体の葺替えは認められない事が多いでしょう。

台風の風災では、屋根材の破損が一番多く、その次が塀の破損が続きますが、その多くが部分破損です。

 

損害認定は早くできる場合と遅くなる場合がある

最近、風災による損害認定は現地に行かなくても損害部分の写真復旧工事の見積書で損害認定ができるようになり、請求から支払いまでが以前に比べてとても早くなったようです。ただし地震による損害の場合は今も1軒づつ損害状態を調査するので保険金の支払いは以前と同様に時間が掛かるようです。

 

早く損害認定するにはどうするか

損害があればとりあえず早く復旧したいと思います。その復旧費用も保険でなるべく早く支払って貰いたいと思いますが、早く損害認定できる資料(写真と見積書)の条件をお伝えします。

  • 写真が鮮明で損害範囲が漏れなく撮影されている
  • 損害範囲の写真と工事見積書の内容が合っている
  • 見積書にメーカー型番の記載がある
  • 見積額が一般的な製品価格、施工価格として妥当である
  • 工務店の担当者に電話してつながりやすい
  • 損害が明らかに風災が原因と認められる

損害認定は保険会社の社員が認定しているのではなく、写真や見積書は保険損害保険鑑定会社に所属する損保鑑定人建築士といった専門家が損害状況や復旧方法を調査・認定します。その際、上記のことが分かれば損害の大小にもよりますが早く認定が進み、保険の支払いも早くなります。

上記のうち一つでも不明点が生じた場合は写真資料や見積書を再提出が必要であったり、連絡が取れない工務店とのやり取りでかなりの日数が掛かることがあります。

 

具体的にどのように鑑定を進めているか

例えば、

築30年過ぎAさん宅と築5年Bさん宅が同じ台風の被害で共にベランダのポリカーボネート波板6枚のうちが1枚飛んでしまいました。

  • Aさんからの保険請求書には

古い携帯の写メで撮影されたピンぼけ写真が1枚プリントアウトされています。見積書にはポリカーボネート波板6枚と付属金物、波板の下地の部品代と施工費・既存屋根撤去費・施工者経費・消費税を併せて30万円が計上されています

  • Bさんからの保険請求書には

デジカメで撮影された数枚の写真見積書にはポリカーボネート波板6枚と付属金物、波板の下地の部品代と施工費・既存屋根撤去費・施工者経費・消費税を併せて8万円が計上されています

この場合、鑑定人は提出された写真で損傷範囲を確認しながらポリカーボネートの単価と枚数、撤去・設置施工費用を書類上で調査します。損害範囲と費用ともに妥当であれば、風災認定して保険金支払いの協定に進めます。

この場合、Bさんの資料は請求書の書類が鑑定人に回れば、当日のうちに認定されます。

一方、Aさんの場合、まず写真が不鮮明で破損範囲が不明なので、保険代理店を通じて写真の再提出を求めます。さらに、見積書を作成した工務店担当者に連絡数量と単価根拠をヒアリングします。このときに連絡がつきやすい業者と連絡がつかない業者で日数の差がかなり出ます。連絡がついても、製品単価が一般流通価格とかけ離れている場合は単価根拠の聞き取りとその後のやり取りで更に時間がかかり、鑑定調査のみ2週間以上掛かる場合もあります。最終的に工務店から明確な根拠が示されなければ、見積書が30万円であっても8万円分妥当として認定されます。

 

保険の損害認定はケース・バイ・ケース

鑑定人や建築士は申請された復旧工事見積書の大小関わらず、1件ずつすべての申請書類について、施工単価の物価本メーカーカタログ過去の事例等から価格情報を取得して総合的に判断します。損傷規模の割に大きい金額の見積書を作成するハウスメーカーもありますが、極端な場合は認定に時間が掛かる割に満額支払われるとは限らないとお考えください。

 

いかがでしょうか。

入っておいて安心な火災保険ですが保険申請時にその要点を知っていると、早く支払いが受けられるかどうかが決まります。ご不明点は保険の代理店担当者にお問合せください。

 

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