建物緑化は本当に良いの?(再掲)
II 建物の緑化は本当に良いの?
この季節まちなかを歩いていると、小学校などの施設でへちまやゴーヤの壁面緑化をしているのをよく見かけると思います。
中には絵画のように様々な植物をレイアウトしているものあります。
とても涼しげでいいですね。
直射日光を遮り建物の空調負荷や建物による環境への負荷を下げてくれるのでエコ運動や環境教育の一貫として行われています。
今回はその建物の緑化について住宅寿命の視点からの話です。
まず、結論から言うと、壁面緑化は方法によって住宅の寿命を短くしてしまうことがあります。
それはどういうことでしょうか?
*建物緑化のメリット
緑化のいいところは建物に緑のカーテンをつけることで直接日射から遮る事ができます。
また、植物は水分を蒸散するので、その気化熱で気温を下げ周囲に涼しさを与えてくれます。これは都市のヒートアイランド低減の一役になりますね。
そして何より目に優しく都心に緑が見えるととても癒やされます。
*建物緑化のデメリット
緑化を維持するための土や水などの荷重が増えるので、建物を建てる際に構造部のコストアップとか潅水設備の維持管理費用とか費用面でのデメリットもあるのですが、今回はそれらは横に置いておいて
植物は少なからず建物にダメージを与えます。
意外に思われたでしょうか?
・植物が躯体内、壁内に入り込み内部から壊してしまう
例えばヘデラ(アイビー)のようなツル性の植物を建築の壁面に添わせた場合、
植物のつるの部分がコンクリート基礎の小さなヒビ割れから基礎に入り込んで内部から亀裂を大きく広げてしまったということがありました。
また、外壁サイディングの下部水切りの隙間から壁面内部に入り込んで外壁内の通気層の中で育ち、壁の破損と建物内部への水漏れを引き起こした例がありました。
外壁下地がモルタルの場合はモルタルを割ってしまったり、モルタル下地のラスからモルタルを浮かしてしまい、壁内部に水が入りやすくなり木躯体が腐枯して劣化が発生することも考えられます。
・シロアリを呼び込む
植物が育つには水分が必要ですが、その水分は建物にとって害になることがあります。
以前にもシロアリの記事を書きましたが、シロアリは湿気と木が大好きです。
緑化の植物は生きているからシロアリに食われないでしょ?
と思う方もいると思います。私もその一人です。
緑化が育つ過程で葉や幹、根が枯れます。 それらがシロアリにとっての食料になります。 枯れた幹や根は盲点でした。
湿気と枯木といった状況があればシロアリは現れます。
そして、アリは驚異的な勢いでどんどん増殖つづけ、すみかとえさ場を求めて植物だけでなく近くにある住宅に移住します。
・虫や生き物が発生する
次に緑は生き物のすみかになります。
緑化したらチョウなどの可愛らしい昆虫だけでなく、蚊や毛虫のような来てほしくない虫も発生します。
また、塀に緑化してヤモリが大量発生した事例もありました。
たくさんのヤモリは何処から来たのかと調べていたところ壁面緑化の植物に大豆くらいの卵らしきものが付いているのを発見しました。
植物を伐採したら塀にヤモリの卵がびっしり張り付いていて背筋が寒くなったことを覚えています。
結局緑化はすべて撤去して卵もとりましたが、その痕が塀にマダラになって残りました。塀だったので左官を塗り直して補修できましたが、建物外壁だったら足場をたてたりして大変だったかもしれません。
他にもいろいろ緑化の失敗事例はあるかもしれませんね。
私も緑は好きです。
建物の緑化はいくつもある方法と、緑化によるデメリットをよく理解した上で緑化をすることをおすすめします。
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