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マンションの施工不良はナゼ起きる?(再掲)

II マンションの施工不良はナゼ起きる?

横浜市に建つマンションの基礎杭に施工不良があった問題が連日ニュースになっています。大手デベロッパーが販売したハイブランドマンションだったため、業界でもインパクトは大きく、報道を見る限り施工不良やデータの不正を行った原因がまだわからないのが現状です。

過去の投稿を少し加筆修正して再掲します。

(今回の横浜市の件と事情が違いますが、その点はご了承ください)

 

分譲マンションの施工不良のニュースが数多く報告されています。

  • 設備配管用の開口(スリーブ)が未施工
  • 基礎杭長さ不足による建物の傾き
  • 鉄筋コンクリートの鉄筋施工不足

などなど。

報道を見る限りデベロッパーも施工会社も大手でマンションのグレードもかなりのハイランクのものです。

購入する側からすると一流の売主一流のゼネコンが組んでいるので、品質に関しては問題があるとは微塵も考えていなかったと思います。

まさに「裏切られた」 という感想をお持ちでしょう。

建設業界の一端の私でさえも、「頼むからしっかりしてくれよ。。」と思うところです。

 

施工不良はどうして起きるのか?

つくる側はわざと欠陥のある建物を建設することはまず考えられません。その理由は、不正をするメリットが無いからです。

施工不良は単純なミスが重なって重大な欠陥につながったと想像できます。

 

ミスを防げなかったのか? 

このような施工不良はあってはならないのですが、ミスであればどこかで気づき、未然に対処できた可能性はあります。

それでもミスを防ぐ事がでいなかった理由は施工現場の状況、体制に原因があると考えています。

 

品質•安全より、コスト•工期を優先させてしまう体質が現場になかったか?

施工状況をチェックする施工管理担当者が施工ミス気付いて指摘したとしても、コストや工期、工法に関わる是正工事に関しては現場所長や設計監理者の判断が必要になります。

そのときにコストや工期を優先するあまり、品質•安全をないがしろにしていていなかったでしょうか?

 

施工不良を補修対応 することが日常になっていなかったでしょうか?

私も過去に「品質の良いものをつくる」という意識が欠如している現場の設計監理の担当者(設計事務所側の現場担当者)になったことがあります。

その現場の施工会社では品質確保のための施工段取り(検討や準備)がまったくされておらず、施工箇所に不具合が出たらその箇所を「補修する」ということが日常のように行われていました。

施工者がこのような意識では表面は取り繕うことは出来ても、躯体内側の状態や天井裏の設備配管•配線の施工状況が不安になります。

 

躯体工事から仕上工事に入るまえに下地づくりを行いますが、建物本体の補修工事はこの下地づくりの時に行われます。

ガタガタのコンクリートの壁をあたかもはじめから平滑でツルツルにできているように見せることができます。

それを良い事に施工者が良い品質の建物を最初から造ることを放棄していました。

 設備関係の補修工事は設備配管ルート(配管の行き先)が決まっていないにも関わらず、工程上躯体工事が始まってしまった場合にとりあえず、建物をつくっておいて配管ルートが決まったら躯体に孔を開けて配管する。

ことが考えられます。

 

以上のように、普通ではやらないことを出来てしまう状況が「日常化」していたか、それを「NO」と言えない体制になっていたのではないでしょうか。

  

マンション選びはどうなるのか?

「どこのマンションが安心なの?」を掘り下げて行きたいです。 

今回ように大手デベロッパー(販売会社)ゼネコン(施工会社)が誠に残念な不祥事を起こしていますが、これからマンションを購入しようと考えている顧客はどこを選び、どこに気をつければ良いでしょうか?

 

答えは

それでも「大手を選択」

でしょう。

 

自社ブランドを守る大手

私自身、今回の施工不良の一件で明確に分かったことがあります。

それは大手デベロッパーは何があっても「自社ブランドを守る」ということです。

マンション施工不良の報道があった大手デベロッパー、ゼネコンのひとつは完成間近であったにも関わらず、建物を解体して建て替えを決めました。

技術的には元設計の強度を担保しながらも設備配管の補修工事は可能でした。

にも関わらず、購入者全てに違約金を支払い建て替えを決断したのは、一件の数十億の建設費ではなく「今まで作り上げてきたブランド」こそが価値あるものと判断したということです。

 

しかし、このようなことは全てのデベロッパーが出来る事ではありません。

特に中小規模デベロッパーでは建物を建て替えるようなことは会社の体力的に無理でしょう。

もし、資金があったとしても、株主や取引先(主に銀行)からは理解が得られないと思います。

その場合は、施工会社による建物の是正工事が行われ、当初と同じ品質(または建築基準法で定める基準など)が担保されているか検証が行われます。

ただ、施工不良があったことが分かると、建物全体の資産価値が下がってしまうことが考えられます。

もし、購入した部屋を売却しようとしたときは、価格が通常以下の査定になってしまうリスクが考えられます。

 

結局購入者が泣いてしまうことになります。

一方、大手の会社のなかに「買取り保証」を提示したデベロッパーがありました。

買取り保証の内容は不明なので想像ですが、「部屋の購入金額と同額で買い取る」というところだと思います。

これもかなり特殊な例ですが、このように施工不良があった場合、

一般の中古マンションの売却査定価格程度では、住民の理解は当然得られないと思われます。

このように、大手デベロッパーとゼネコンだからこそ出来る、消費者への賠償があることは今回の一連の不祥事でよくわかるところでした。

 

中小デベロッパーは不安なのか?

では、中小のデベロッパーはダメなのか?

というと、そうではありません。

 地元の比較的小規模なデベロッパーと自社の施工会社によるマンションであってもその施工品質レベルが申し分ないところはあります。

施工不良時の保証という面では大手のようにはできないけれども、品質管理を徹底することで建物の価値を高く維持出来ることが可能です。 

しかし、こういった施工状況を見極めるのは一般の方は非常に困難です。

ほぼ運と言っても言い過ぎではありません。

専門知識を持つ建築士やホームインスペクターであれば、目視出来る範囲で施工不良を発見し、契約前、引き渡し前に売主や、施工者に是正工事を依頼したり、状況によっては契約自体を取りやめる判断も可能です。

 

これからは購入者もよく見て、勉強し、自らの責任で判断することが求められます。

私たちホームインスペクターはその一助になればと考えています。

 

 

 

 

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